診療案内



1)発熱とは
2)疲労熱の考え方
3)熱性痙攣
4)熱中症

1)発熱とは
1.発熱の起こる理由
感染や炎症の際に、白血球から放出される種々の因子によって刺激された体温調節中枢が 体温を高体温にセットします。すなわち、感染や炎症の際には、自らが体温を上げているのです。
高熱にすることにより自らの免疫系の働きを強くし、細菌・ウイルスの活動を抑制すると言われています。
しかし臨床的には、「熱は下げない方が感染からの回復に有利」なのか?、「下げる方が有利」なのか? という結論は出ていません。

2.何度から発熱?

当院では、37度以下は「平熱」、37〜37.5度は「ほぼ平熱」37.5〜38.5度は「微熱」38.5〜39度は「軽い発熱」39度以上を「発熱」と考えています。  

3.解熱剤の使い方

「発熱の起こる理由」で示した理由により、解熱剤を使わない方が良いという 意見もありますが高熱による児の体力・水分喪失も放ってはおけません。
結論として、発熱していても機嫌が良く、元気なら様子を見ていて良いでしょう。
体温で考えれば、38.5度までは解熱剤を使う必要はありません。
機嫌が悪ければ38.5度以上で解熱剤を使いますが、機嫌が良ければ39度まで待っても良いでしょう。
 

4.発熱を起こす病気の考え方
小児の発熱の原因の90%以上は「ビールス」が原因の感冒(かぜ)と言われています。
「かぜ」は特別な治療をしなくても自然に回復しますが、平熱になるのに何日もかかることもあります。
「かぜ」でも高い熱が出ることは多く、熱が高いことを心配されることが多いのですが、大事なことは熱の高さより本人の元気さです。
水分が摂れていて、機嫌が良く、歩いたり、お座りが出来ればまず心配はありません。
しかし、悪い「バイ菌」による感染の場合は熱が高いだけでなく、児の元気がないことが多く、抗生物質を飲む必要があります。
一般に、「ビールス」による感染の場合は元気なことが多く、「バイ菌」の場合は状態の悪いことが多いです。
診察だけでは「ビールス」か「バイ菌」か区別つかないときは血液検査をします。

5.血液検査の考え方
代表的な検査は「白血球の数とその分類」と「CRP」です。
「バイ菌」感染の場合、体はバイ菌と戦うために白血球を増やし、種々の免疫機能を高めようとします。
その結果、肝臓で「CRP」という蛋白が作られます。
白血球は火事を消す消防士さんで、CRPは火事の際に出た煙に例える事が出来ます。
大火事(=バイ菌感染)の際には、消防士さんの数(=白血球)も煙の量(=CRP)も多くなりますが、軽い火事(ビールス感染)では、消防士さんの数(=白血球)も煙の量(=CRP)も増えません。
一般的には、「バイ菌」感染では白血球が増え、CRPも高くなります。
一方「ビールス感染」では白血球は減る事が多く、CRPも高くなりません。
 


2)疲労熱の考え方
病気が治ってきて元気そうに見えるけれど、夕方から決まって発熱するお子さんもよく見ます。
特に、保育園・幼稚園に行っていると、発熱しやすくなります。
体が完全に回復しない(疲労が残った状態)ままに活動すると、いつもなら平気な事でも体に応えます。
特に保育園や幼稚園に行くと発熱しやすくなります。
疲労がまだ残っているために体が「しんどい」と悲鳴を上げるのです。
体を休ませてあげることが一番の治療です。
無理をすると、次の病気にかかりやすくなります。
「疲労熱」には保育園に行き始めたばかりの1歳前後の児によく見られる「昼タイプ」と
園には慣れている年長さんによく見られる「夜タイプ」があります。

1.疲労熱・昼タイプ(年少さんに多いタイプ)
1歳前後の年少さんで園に行き始めたばかりの児では、園に行くやいなや熱(多くは38度程度)が出て、 園からの呼び出しでお迎えに行っても、連れて帰る頃にはほぼ平熱になっていることが度々あります。
児の元気も良いので、お迎えに行った人は本当に熱があったのかしらと思うこともあります。
園に行き始めたばかりの児には、慣れない園での生活は非常に疲れます。
そのため暫くは、園に行くと直ぐに熱を出すということが多くみられます。
1歳前後の児は体温調節もまだ不安定なので、一段とその傾向が強いです。
この様な発熱を続けていると、次第に疲労もたまり病気をもらいやすくなります。
少し早めに迎えに行ったり、時には休ませるということが必要になります。

2.疲労熱・夜タイプ(年長さんに多いタイプ)
年長さんになると園の生活にも慣れ、少しぐらい疲れていても園で元気そうに遊んでいます。
しかし、少し風邪気味で園に行く事を続けていると、疲労のために夜になって熱を出すことが多くみられます。
こういう状態は大人にもよく見られることで、風邪気味で仕事を続けていると夜になると何となく熱っぽく感じ、何日か無理をすると体の芯が疲れたように感じるということが皆さんにもあると思います。
夜に38度ぐらいの熱で、朝になると37度程度になる様な熱型が続く時は子供も疲れているのではないかと考えてあげて下さい。
一番の治療は思い切って休ませてあげることだと思います。


3)熱性痙攣
 
1. 症状

多くは熱の上昇時に(通常38度以上)起こるけいれんで、小児の7〜10%が経験しています。
発症のピークは1歳であり、約80%は3歳までに発症します。
特徴をまとめると以下の様になります。
  
1.ほとんどは10カ月から3歳 (大多数は5歳になれば起こさない)
2.全身のけいれん
3. 5分以内に治まることが多い (90%は15分以内です)
4.左右対称性
  以上の特徴と違う場合は「てんかん」の可能性も考えなければなりません。
 「熱性けいれん」を経験した児の、約60%は1回限りですが、2回経験する児は約30%、3回経験する児は約10%、そして4回以上経験する児が1%と言われています。
  3回経験すれば、「てんかん」との鑑別目的で脳波検査をするようにします。

 2.治療
1.けいれんに対して
 一番大切なことは、普通は数分で収まりますから決してあわてないことです。
 突然の痙攣のうえ、顔色も蒼白になりあわててしまう方がほとんどですが、普通は数分で収まるので、あわてずにまず時計を見てけいれんの持続時間を計れる余裕を持ちましょう。
 舌をかまないようにと口の中に何かを入れることは、喉を突く心配があるのでしてはいけません。
 10分続くようなら、病院を受診してください。
 けいれんに対しては、けいれん止めの坐薬(ダイアップ)を使います。
 2回目のけいれん止めの坐薬(ダイアップ)を最初の坐薬から8時間後に使います。

2.熱に対しては
 解熱剤の坐薬を使う場合は、ダイアップ坐薬を使った時は、ダイアップ坐薬を入れてから30分して使います。

 3.けいれんの予防
 熱性けいれんを2度した児は発熱時(37.8度以上)になれば予防的にダイアップを使った方がよいでしょう。
 使い方は発熱時にダイアップ坐薬を入れ、8時間後にまだ発熱があれば2回目のダイアップ坐薬を入れます。

 4.予後
 将来の心配は要りません。
 小学校に入る前に自然に治ります。



4)熱中症

熱中症とは、暑さや運動によって体温が上がった時に体が適応できなくなった状態です

 Q‥‥暑さや運動で上がった体温はどのように調節されるのでしょうか?

  次の二つの方法で体温調節をしています。
 1)皮膚の血管を拡張させて皮膚表面に多くの血液を集めて皮膚温を上げ、外気との温度差で熱を逃がす(乾性熱放散)
 2)汗腺から汗を分泌して、皮膚表面の汗の蒸発で体温を下げる(湿性熱放散)

 Q‥‥なぜ、熱中症が起こるのでしょうか?
 1)皮膚表面に多くの血液が集まると脳や心臓に運ばれる血液量が減り血圧が低下するため、顔色が青くなったり・めまい・立ちくらみが起こります(熱失神と呼びます)
 2)大量に汗をかくと、体内の水分やナトリウムが減るため、足の筋肉や腹筋などに痛みを伴う痙攣が起こります(熱けいれんと呼びます)

 Q‥‥熱中症の程度
 熱中症1度
  皮膚血管拡張により脳への血流が減るために「めまい・立ちくらみ・顔色不良(熱失神)」が起こり、 血液の塩分濃度が低下するために「筋肉の痛みや痙攣(熱けいれん)」が起こります
 熱中症2度
  大量に汗をかき体内の水分が不足脱水)するため、顔が赤くなり、吐き気・嘔吐やボーとして判断力が低下するようになります(熱疲労と呼びます)
 熱中症3度
  体内の熱が放出できなくなり体温が急激に上昇し(39度以上)、意識障害(呼びかけても返事がない)・行動障害(まっすぐに歩けない)過呼吸ショックが起こります(熱射病と呼びます)

 Q‥‥熱中症の対処はどうしたら良いですか?
  風通しの良い日陰や涼しい場所に速やかに運び、足を少し高くして寝かせます意識があり吐き気や嘔吐がない場合はスポーツドリンクを少しずつ何回にも分けて補給します。
  意識がなかったり、もうろうとしていたり嘔吐がある場合は救急車を呼び医療機関に搬送して下さい。




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