産婦人科を退院してから1カ月健診までの間に、いろいろと気になる事があると思います。
お母さん方から多く聞かれる心配点や、小児科医として特に、
「1カ月健診の時に、注意して観察する大切なポイント」を
ならべてみました。
1.体重増加に関して
赤ちゃんは生まれてから1ヶ月で約1,000g体重が増えます。
産科を退院後1日平均で約30g増えていれば心配いりません。
体重増加が1日平均15g以下の場合は体重増加不良です。
原因が何かを一緒に見つけましょう。
●体重増加の悪い時
体重増加が1日15g以下の場合は、何か原因があるかを
考えます。
「母乳の出がまだ少ない場合」や「ちょこちょこ飲む」
ため哺乳回数は多くても哺乳量は増えていない場合も
あります。哺乳のリズムをつけるために、3時間間隔
で哺乳することを勧めます。
1回の哺乳量の目安は体重1kg当たり20mlです
(例:4kgなら一回哺乳量80ml)。
2.黄疸に関して
ほとんどの新生児で生後2日目頃から認められ、7日目頃
には薄くなりますが、1カ月時に黄疸が残っていることも よくあることです。
そのほとんどは、主に母乳が関係する「生理的黄疸」で
心配ありません。
しかし、稀に胆道の閉鎖を原因とする「胆道閉鎖症」や
「新生児肝炎」による黄疸があります。
「胆道閉鎖症」は1万人に一人の割合で発症しますが、
2カ月までに診断をつけ、治療を開始しなければ肝硬変
に進行します。
便の色が黄色でなく、白~ベージュ色の時には注意が必要
です。
3.心雑音に関して
ほとんどの先天性心疾患では出生早期から心雑音が
あります。
心雑音のある児でも手術が必要になる児はわずかです。
哺乳不良、体重増加不良、チアノーゼのある時は注意が
必要です。重症の先天性心疾患は、出生後早期にチアノ
ーゼや多呼吸、哺乳不良をきっかけに見つかります。
しかし、稀に1ヶ月健診で重症の先天性心疾患の児が
見つかることもあるので心雑音のある場合は心エコーを
行います。
4.呼吸困難
赤ちゃんは気道が細く、首が顎で圧迫されがちのために
ゼロゼロという呼吸音が聞かれやすいです。
特に、冬場はRSウイルスによる細気管支炎を起こしがち
で、呼吸困難が顕著になることがあります。
あえぐような呼吸や、哺乳が休み休みになる、ゼロゼロが
ある時は心配です。早めに受診してください。
夜眠れていて、哺乳も普通に出来ていれば安心です。
5.嘔吐
赤ちゃんはよく吐きます。体重増加が良ければ心配ありま
せん。
心配な嘔吐としては、生後2~3週頃から噴水の様に嘔吐
する「肥厚性幽門狭窄症」があります。
6.貧血
赤ちゃんは生後1ヶ月頃から次第に貧血になり、生後2~ 3ヶ月頃に最も貧血が強くなり生理的貧血とよばれます。
生まれて1ヶ月間は赤血球があまり作られず、生後3ヶ月
までは急激に体重が増える事が大きな原因で心配ありませ
ん。
貧血がひどいと蒼白・哺乳力低下・多呼吸・頻脈・無呼吸
になります。
非常に稀に骨髄での造血が悪いことがありますので、貧血
が強い場合は血液検査をします。
防府市での発症:胆道閉鎖症は10年に1~2名
手術を必要とする先天性心疾患は年に3名
手術を必要とする肥厚性幽門狭窄症は年に
1~2名
入院を必要とする細気管支炎は年に5~10名
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